○ 大阪・ハンブルグ友好都市提携20周年
谷口顕一郎 Hecomi Study #15
会場:AD&A gallery
大阪府大阪市西区京町堀1-6-12
電話(06)6443-3300
会期:2009年1月9日(金)~1月23日(金)
休み:木曜日(定休日)
時間:?:00~?:00
主催:日独文化交流実行委員会
ーーーーーーーーーーーーーー(12・29)
テンポラリー会場で、帰国中の谷口君からDMを頂く。そして、以前にドイツで開いた個展のための小冊子をはさんで、今展の概容を知ることができた。
冊子には見開き2頁の道路の写真があった。長さは10mはあるだろう。全てはここから始まった。
場末のようなひなびた通路、痛みが激しい。谷口顕一郎はその傷を「凹み」と語る。きっとこの通路を多くの人や乗り物が踏みしめたことだろう。アスファルトだから作られたのはそんなに大昔ではない。せいぜい戦後だ。補修されずにいるということは、今では利用価値が低い場所なのかもしれない。だが、通路(場)自体はかなりの歴史を持っているはずだ。中世まで降れるかもしれない。
そういうドップリと血なまぐさい場を、作家は視覚表現の線・面の模様として捉えなおす。通路の模様をトレースして、その模様の実物大を黄色いプラスチック版として制作する。それを適当に切り刻んで兆版で連結し直す。拡げれば元の通路の傷(凹み)にすっぽりと収まる。折り曲げていけば千差万別の立体造形にもできる。DMの宙に浮いた黄色い作品が正にそれだ。可能性の一つでしかない。
谷口顕一郎は通路の物質性、傷ついた理由としての時間性や社会性を一端は無視する態度をとる。自然や社会を不問にして、美それ自体に執着かのような態度をとる。だが作品の無機質な色合いとは裏腹に、画家自身が通路(場)に拘った生理がむき出しではないか!傷(凹み)の具体的な関係性から離れて、画家自身の私的関心や肉声を顕わにすることによって、見ることはできない現場に鑑賞者はいやがうえにも導かれるのだ。なんという遠回りな回廊を通って、僕らはベルリンのひなびた傷に戻っていくのだろう。
写真家ならば現場を彼の感覚で撮影すれば良いだろう。画家ならば彼の方法で二次画面に価値を再現すれば良いだろう。
出来上がった黄色い立体作品。写真で見るだけなのだが心が揺れる。しかも激しく。作家によって人工物が二次加工、三次加工されている。作家のフィルターを通して新たな何かが付加されている。
↑:今展の通路の4分の1くらいの現場風景。
昨年、テンポラリーで上の写真の凹み作品を見た。それは製作過程の披露でもあった。何とあの時の凹みは全体のほんの一部だったのだ!
→今展は多くの関係者の協力による展覧会です。無味乾燥とも思える谷口・凹みに多くの人が関心を寄せている。それぞれの思いは違うかもしれない。黄色いプラスチックはそれらの違いを無視して楽しく浮いていることだろう。