2010年 01月 31日
○ 札幌美術展 真冬の花畑 会場:札幌芸術の森美術館 札幌市南区芸術の森2丁目75番地 電話(011)591-0090 会期:2009年11月29日(日)~1月31日(日) 休み:基本的に定休日は月曜日 時間:9:45~17:00 (入館は~16:30まで) 料金:(当日券)一般・700円 高大生・300円 小中生・150円 主催:当館(札幌市芸術文化財団) 北海道新聞社 【参加作家】 井桁雅臣 岡本和行 川上勉 工藤悦子 佐々木小世里 櫻井マチ子 佐藤泰子 白鳥信之 杉田光江 高幹雄 鳴海伸一 西村明美 札幌ボタニカルアート協会 【特別展示(物故作家)】 小川マリ 片岡球子 ーーーーーーーーーーーー(12・14) 案内状を頂ました。ありがとうございます。招待状までいただきました。嬉しい限りです。 昨年までは札幌市民ギャラリーで開かれていた札幌美術展です。今後はここが定番になるのか気になるところです。 非常にいい展覧会です。 展示構成は1作家を1部屋にくぐるという感覚です。以前の「20人の試み展」を思い出させます。そのときよりも参加作家は少なく、書や写真などを排して、表現分野を限定しています。だから一つにまとまっている。この強いまとまりが今展の最大の特徴で、まとめきった企画者の力の入れよう、その感覚・個性・思想が会場全体を支配しています。 しかもテーマが「花」で、言葉どおり花だらけで、美しく明るく元気一杯です。花の美・美・美、華・華・華の連続でメリハリには乏しく、知的な遊びや間を取る余裕のなさが、少し残念なところです。ですが、鑑賞者全てのリクエストに応えられないのが美術展示です。企画者は花・華だらけでいこうと強く選択したのです。その決意、徹底振りに拍手を贈りたい。 さて内容です。 パンフが良くできています。パンフ作品と全く同じ作品も多く、概ね今展の作品紹介としても使えます。この通りの展覧会と思っていいでしょう。 違う作品紹介は白鳥信之と杉田光江だけと言っていいかもしれない。 白鳥信之はパンフと同じ「桜花」の作品。写真は花の華やかさからくる迫力がある。才気勝ちでもある。 展示作品は爆発を殺して、沈溺する花の華やかさの凄みを表現している。居合い抜きのような殺気がこもっている。時に氏はロマン・情緒に流されがちという弱点もある。今展には微塵も無い。花を画いて、花の美におもねらない作家の主義主張がある。メッセージ性の強い作品だ。疲れる作品とも言える。心地良い疲れだ。氏から何かが吹っ切れた感じだ。無駄なものを削ぎ落とし始めた。 それらの作品が本会場入り口を大きく占有していている。企画者は氏の作品を真っ先に大きく見せている。その人の感覚がわかろうというものだ。今展を作る(企画する)意気込みの入り口でもある。 杉田光江は種を使ったインスタレーション。パンフは動がテーマで、会場全体へ拡がる増殖感に溢れているようだ。 今展は「静」の中でのほのかな動きを表現していた。作品そのものはパンフとは違うが、継続的な作家の画業を確認できる。 一人一部屋的展示だが、実質的には廊下的な展示もある。本当の一人一部屋の作品展示が、どうしても印象の中心になる。白鳥・高・井桁・岡本・杉田・櫻井・佐々木・ボタルカニアートなどだ。 照明効果を飛び切り発揮しているのが、高幹雄と櫻井マチ子。 高幹雄は暗室だ。かなりの広さの一部屋を作ってもらって、たた一点だけを見せていた。作品の好み度は鑑賞者によってバラツキがあるだろう。彼の参加そのものが「若者現代美術家」という視点での選択だと思う。企画者がどうしても「現代美術館的」・「現代美術的」展覧会にこだわったのだ。 その展示構成の無理が、小川マリ・片岡球子の2点の作品を、単なる通りすがりの飾りにしていた。 特に小川マリの展示はあれではダメだ。小なる空間展示であっても、余韻を作る感覚が欲しい。「総花展」にしなければという企画者の義務感の失敗展示だ。作品に対する愛が感じられない。 櫻井マチ子は間違いなく力作だ。しかも展示手法が抜群に素晴らしい。 暗室の中で、作品やキャプションだけが大型広告写真のように目に飛び込んでくるのだ。マジシャン・ルームだ。さすが、プロの展示家である。これは見ないと損だ。 だから、作品そのものを味わう余裕がなかった。もう一度見に行こう。 「札幌の冬を花だらけにして、少しでも元気になろう」という展覧会です。充分に成功していると思う。 こういう展覧会を見て、美術愛好家達の会話の共通言語になればと思う。明るく元気にさせるのは「冬」ばかりではないでしょう。「美術」そのものが、より元気になればと思う。
by eitu
| 2010-01-31 09:47
| ☆芸術の森
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